毎年6月、ロンドンで開催されるウィンブルドン。四大大会の中でも最も格式高いこの大会では、選手たちが全身ホワイトのウェアに身を包みプレーする。
世界中のセレブや著名人、さらには英国王室がエレガントな装いで観戦に訪れることでも知られている。
そんな舞台を支えているのが、審判員やボールキッズたちだ。選手ほど注目を集めることはないが、彼らの存在なくして試合は成り立たない。
興味深いのは、そのユニフォームである。
選手たちがホワイトを纏う一方で、オンコートスタッフの装いはネイビーが基調。審判員はネイビージャケットにホワイトのトラウザー、ボールキッズもネイビーのポロシャツやワンピースを着用している。2006年からはラルフ・ローレンが公式制服を手掛けており、その洗練されたスタイルはウィンブルドンの品格を静かに支えている。
白が主役なら、ネイビーは名脇役。
この二つの色は切り離すことのできない存在だ。
なぜ、「ネイビー」は「スポーティ」なのか

ウィンブルドン公式オンラインストアより
ネイビーにはどこかスポーティな印象がある。
当たり前のように感じているが、そのイメージはどこから来たのだろう。
その背景にあるのが、ブレザーという存在だ。
今でこそ「ブレザー=ネイビー」は定番だが、そのルーツの一つはイギリスの名門大学にある。学生たちはスポーツの際にスクールカラーを反映したジャケットを着用しており、当時のブレザーはネイビー一色ではなかった。
もう一つの起源とされるのが英国海軍の制服である。海軍で採用されていたネイビーのブレザーは、端正で実用的な装いとして広まっていった。
スポーツのためのジャケットと、正装としてのジャケット。
異なる文脈を持つ二つの文化が重なり合ったことで、「ネイビー」「ブレザー」「スポーティ」というイメージが自然と結びついていったのかもしれない。
袖裏をチラリ、ブレザーにテニスの遊び心


そんなネイビー、ブレザー、スポーティというキーワードを体現する店が、豪徳寺にあるネイビーブレザーストアだ。
オーナーの小林英樹さんは、ラルフ・ローレンやロロ・ピアーナで長年セールスを経験してきた人物。クラシックな装いの「作法」を知り尽くしているからこそできる、絶妙な崩しのスタイリングに定評がある。
店のシグネチャーは、もちろんネイビーブレザー。
基本はオーダー制で、肩の構築や着丈、袖丈、そして裏地まで細かく選ぶことができる。
なかでも印象的なのが、初期から採用されている「テニスボールカラー」の袖裏だ。
ウィンブルドンの審判員が羽織るブレザーから着想を得たというその配色は、袖口を少し折り返した時にだけ見える小さな遊び心。さりげない細部に〝ネイビーブレザーストア〟らしさが詰まっているのだ。
思いやりと想像のスタリング



▲ネイビーブレザーストア×S2Oのポップアップに合わせて組まれた1日限定のスタイリング。お店に行くと画像では見られなかったような細部のこだわりが見られるので、ぜひ足を運んでもらいたい。
ネイビーブレザーストアに初めて入る時、まず丁寧に組まれたスタイリングが目に入る。背筋が伸びる。しかし、よく店内を見てみると古着Tシャツが置いてあったり、ドゥーラグが置いてあったり、スーベニアショップのようなプロップもあったり、細かく見ていくうちに自然と居心地が良くなっている。
壁にかかったスタイリングにはいつもストーリーがある。
スポーツ一つとっても、移動の時、ウォームアップの時、セレモニーの時、パーティの時、と様々なシーンを想定してディスプレイをされている。
テニスも、プレーだけで完結するスポーツではない。
クラブハウスではテニスシューズからローファーに履き替え、
テニスコート付きのホテルではシャワーを浴びた後にブレザーを軽く羽織る。
そんな何気ない所作の積み重ねが、テニスという文化を形づくっている。
だからテニスウェアも、オンコートだけを考えればいいわけではない。
プレーの前後にどこへ向かい、誰と会い、どんな時間を過ごすのか。
小林さんのスタイリングを見ていると、そんなライフスタイルまで自然と想像が膨らんでくる。S2Oのアイテムを取り扱いいただき、今回ポップアップをご一緒させていただいたのも、そうした価値観への共感があったからだ。
テニスと日常を切り分けるのではなく、緩やかに繋いでいくこと。
ネイビーのブレザーを羽織ることも、そのひとつなのかもしれない。
文:大島 滉平